Masato Kubo

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ソフトボックス 持っててよかった、面光源!

「ここで集合を撮れってか…!?」

「メインテーブルの逆光キツすぎてバウンスじゃ光量たりないー!」

「指輪が…目立ちません。。」

「天井がデコボコでバウンス安定しなさすぎるよ。。」

こんな感じの状況は、ウェディングフォトグラファーなら誰しもが経験したことであるでしょう。もちろん僕もその一人。今日はそんな人たちのためのブログです。前回のグリッドと対をなすこのアイテム。題して

集合、各卓、指輪なら任せなさい。ソフトボックス~持っててよかった、面光源!

ということで、今日はソフトボックスの紹介と解説を。前回は「〇〇だけ」を照らすということでグリッドを紹介しましたが、ボックスはある意味正反対のアイテムです。グリッドとボックスを使いこなせればかなり表現の幅は広がりますので、ぜひ今回も読んでみてください。

ボックスってどんな機材?

ソフトボックスは全国どこのどんなスタジオにも常設されているくらい、スタジオ撮影には必須のアイテムです。どんな特性があるかというと…

  • 光を拡散させ、広範囲を照射できる。
  • ディフューザーを通した光になるので、発色とコントラストが落ちる。
  • 透過光なので発色がおちる。

こんな感じですかね。グリッドとは真逆の特性なのがわかると思います。

面積が大きくなればなるほど拡散性が高く、光で包まれた芳醇なライティングができるのですが、私たちの現場ではとてもそこまでのものは使えません。それでもないよりはいいよね、ということでこの機材(43cm×43cm)を買いました。が、実は私も一時期「あれ?ボックスって現場で使わなくね?」と思い、持って行かなかった時期があったんです。でも「やっぱボックスないとダメだわ」という結論に落ち着きました(笑)。では、前回と同様、直当てとの比較を見てみましょう。

直当てとボックス、描写と露光量の違い

ISO250 1/200 f11

前回のコピペ。生の直当てです。

ここにボックスをつけてみます。

ISO250 1/200 f11

照射範囲が広がり、露光量も若干落ちているのがわかります。

コントラストと発色が落ちて影が柔らかくなっていますね。それと、第二回で紹介したポールポッドと組み合わせて使うと安定性が落ちます。使うときは転倒に注意。では実例を見てみます。

現場ではどんな使い方ができるの?

ISO3200 1/50 f2.8 24mm

人物カットのサンプルを見ていただく前に、撮影した現場の状況を説明しておきましょう。

今回のサンプルは、先日撮影した代官山のレストランです。非常に重厚な雰囲気でホスピタリティも良くて、お客さんとして来たいなぁという印象でした。が、フォトグラファーとしては「マジカヨ」と言いたくなるような状況なのがお分かりいただけると思います。

地明かりなくて暗い、天井も壁も色があってバウンスNGという。逆に言えばこういう時こそグリッドやボックスの出番。ほぼ全カット、ライティングしました。ここで各卓を撮ったので直当てとボックスの描写の違いご覧ください。

各卓、オンカメ直当てカット

ISO250 1/200 f5.6 35mm

もし僕がライティングをやってなかったら「これしかない」という撮り方です。これはちゃんと写ってるという意味では確かにそうなんですけど…。雑誌のファッションフォトなどではこれを上手く使っている写真も度々見かけますので使い方次第ではかっこいい感じになるんですが、「ウェディングの集合」を撮るには不向きなライティングだと思います。

各卓、ボックス使用カット

ISO2500 1/200 f5.6 35mm

ボックスを使いました。この日はアシスタントがいたので持ってもらいましたが、一人だったとしても、右手にカメラ、左手にストロボという両手持ちで使えば可能です(実際に一人の時は僕も両手持ちで撮ります)。ボックスを高めに構え、少し前倒しでフロントトップのような当て方をイメージしました。これは屋内であればほぼどんな現場でも対応できるくらい安定したライティングです。

次にブツ撮り。作例は今回も指輪です(上記とは別会場)。

指輪のカット

ISO50 1/200 f5.6 100mm

ルブタンのヒールを使った定番カット。ハイライト部分を大きく入れるためにボックスをできるだけ寄せました。シャドウ側はレンズポーチを入れ、黒レフ代わりにしてあります。あとはライティングと直接関係ないんですけど、指輪を等間隔に配置しバランスを取るためにヒールの裏側部分に綿棒の芯部分を噛ませました。この画はピンタレストに溢れているので誰でもできますが、だからこそ個性が問われるカットなのかなと思います。

安心と安定をお約束。それがソフトボックスの役割

今回も特性と作例を見ていただきました。ボックスはグリッドと違い、(あくまで僕の場合)使うシーンがある程度決まっています。

指輪のメインライト、各卓、集合、メインテーブル、と(他にブツ撮りでも使ったりしますが)指輪を除きほぼ同じ効果を狙っていますね。つまりウェディングの撮影においては「きちんと写す」ということを意識した機材でもあります。

冒頭の「逆光がすごすぎるメインテーブル」「ダウンライト強すぎて人物の影めっちゃ汚い」「ミックス光キツすぎて泣きたい」「天井が鏡と茶色の梁で構成されていてバウンスが使えない」というような状況に当たったとき、グリッドは「○○だけを照らし」ドラマチックな画作りに使うことが多いですが、そこで(各卓、メイン、全員など人数問わず)集合を撮ろうとしたらどうでしょう。

上記にサンプルとして出したオンカメ直当てという撮り方、定常光の浅いf値とかなりな高感度で無理やりな撮り方、さらに無理やりバウンスさせてストロボについているちぃーさなキャッチ用の白レフで明るさを稼ぐ撮り方…という消極的な選択肢しかない、みたいな状況に当たった方も少なくないはず。そんな時にこのボックスは活躍してくれるのです。

そしてそういう状況に当たって、「集合撮ってください!」「みんなで撮って~!」と言われた時に「ボックス持っててよかったわぁ~~~~…!」となることでしょう。感度をあげず、f値を稼ぎ、かつ色温度と描写も正確に撮る。そういう「安定」をもたらしてくれるのが、ボックスのいいところ(前述のボックス各卓の感度が2500なのは、このあと連写が必要なシーンがあったため出力を抑えざるを得なかったので)。それと、ボックスで撮影した各卓写真は色と露出がほとんど転ばないのでraw現像が楽なのもメリットの一つです。このアイテムを使えば厳しい状況で撮った集合の「この人とこの人顔色違いすぎてレタッチマジしんどい」という地獄から解放されます。

さて、この2回で現場でよく使うアクセサリーの紹介を終えました。次回は「機材の特性はわかったけどどこでどうやって使えばいいかわかんない。つーかライティングするしないの判断ができない。」という方のためのお話。ということで「ライティング、するの、しないの!?どう判断すればいいんだ!その判断要素を考える!」をお届けする予定です。ではまた次回!


今回紹介した機材はこちら。

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以前の記事「ウェディングフォトに欠かせないストロボライティング機材一覧」でもソフトボックスについて触れていますので、そちらもぜひ合わせてお読みください。


執筆者紹介

折原 貴祥 / おりはら たかあき

 1985年生まれ、埼玉県出身。写真家の父を持ち、幼少期より写真に接してきた経歴を持つ。
 ウェディングフォトを始める前は、ブツ撮りの広告スタジオにアシスタントとして所属。そのことから、ウェディングの現場でもあらゆるシーンをドラマチックに仕立て上げるストロボライティングに定評がある。

クッポグラフィー 折原ページ
http://www.kuppography.com/takaakiorihara/