「暗い…データが眠い…光に変化がない…」
「あ~…こう、パーン!て!パーンって光射さないかなぁー!!!」
「雨でロケ?よっしゃまかせとけ(どうしよう)」
こういう日もありますよね。お天気には勝てません。でも、天気に逆らわずにうまく利用できるのがナイスなフォトグラファーだと思います。曇りの日、雨の日にキラッとした1カットが撮れるとデータの見栄えがよくなりますので、今日はそういう日のロケに使えるライティングのご紹介です。ということで
「曇りの日でも諦めるな!逆光を作れ!サイドライトを寄せろ!ロケ現場で使うライティング!」
です。前回は披露宴会場でしたが今回はロケ。そして、晴れの日ではなく曇りや雨の日のロケを紹介するのは、晴れてるとクリップオン2灯くらいじゃ何の役にも立たないことが多いからです。
夏の日中はトップライトがガッツリ入るので、そういう状況でライティングしたかったらモノブロックとかプロフォトのような大光量のものを用意するか、クリップオンを使うにしても何灯か束にするしかありません。
しかし、このブログを読んでくださってる方々の多くはウェディングのロケ現場にクリップオン2灯で戦っている方が多いと思いますので、そういう方が使えるライティングの紹介です。ではいきましょう。
1:曇りの日に作る夕焼けのような逆光
Why:曇りの日のベタッとした光にアクセントをつけたいから
Where:新郎新婦と写っている背景全体
How:二人の後ろ、高めの位置から直当て逆光
曇りの日の夕方です。ではストロボを入れてみましょう。
二人の奥から一灯入れました。解説、ポイントは下記に。
behind the scene
1/まず、地明かりの状態をマイナス1段くらいアンダーにします。暗めの露出を作って、そこをストロボで明るくする、という考え方ですね。地明かり暗め、ストロボ強めというバランスです。
2/二人よりも高い位置にストロボを構えます。低くしてしまうとフレアがでないので。御覧頂いて分かる通り、このカットはスタンドが写ってしまいます。それをフレアで隠すという写真の基本からはまったく外れたやり方です。
3/ストロボはほぼ水平、カメラは少し前倒しするように画を作ります。カメラが水平のままだとフレアが入りすぎてしまうので。この傾け加減が肝要です。
以上三点がポイントですが、ライトとカメラの高さ、角度が少し動くだけでフレアの入り方がかなり変わるのでこのカットはなかなか難しいです。時間に余裕がある時に試してみてください。それでも、きちんと撮れた時にはすごく喜んでいただける画になります。雨上がりなどにできると、水滴がキラキラしてなお良いと思います。
2:雨の日(暗い日)に作るサイドライト
Why:背景を落として被写体を浮き立たせたいから
Where:新婦の顔、上半身
How:新婦の横からボックスでサイドライト
雨の日なのでかなり暗いですね。新婦様が真っ暗になるくらい露出を落としましょう。
入れました。左側から一灯です。下記に解説を。
behind the scene
1/背景を暗くしたい&被写体に自然光を当てたくないので、影も作れて雨も防げるという理由から、新婦を門の下に立たせました。できるだけ露出が落とせると、自然光とストロボ光が混ざらないので色もすっきりします。
2/望遠レンズを使い(この時は100mm)、できるだけボックスを被写体に寄せましょう。望遠レンズと相性のいいライティングです。
以上二点です。ライティングをする前に、背景の露出をコントロールしましょう。明るいヌケにして背景と被写体をなじませるのか、暗い背景にして被写体を浮き立たせるのか。どちらが正解というのはないのでイメージによって露出をコントロールします。僕は白飛びしている背景があまり好きではないので落とし気味に作ります。これはボックスではなくグリッドを使ってすこし離したところから当ててもいいんですが、今回は肌と着物を艶やかにみせたかったのでボックスを使いました。
3:サンセットや夜景など、背景の露出に合わせたスポット光
Why:空や夜景の雰囲気を生かし、なおかつ二人を引き立たせるため
Where:二人
How:フロントサイド気味に離れたところからグリッド
このカットも、まずは背景の露出を決めます。夕焼けの時間はあっという間に過ぎていくので急ぎましょう。
グリッドを使いましたが、新郎に当たっていません。失敗です。ほんの少しのズレでこうなります。
当て方を修正し、二人と夕焼けが引き立つカットになりました。
behind the scene
1/サンセットやサンライズなど、王道のロケーションです。この場合、シルエットで二人の後ろから逆光というのが定番になっていますが、フロントやサイドからグリッドで直当てするときちんと表情やドレスがわかるカットが撮れます。まずは先程と同じく、背景の露出を決めます。この場合も、空の色が濃く出るようにアンダー気味に露出を合わせました。
2/「夕焼けの中を二人が歩いている」という画にしたかったので広角(24mm)を使い空を広く写します。グリッドのいいところは24mmのように引いた画でも、二人だけを浮き立たせることができること。この画でボックスを使うと地面や柵、一般の方まで照らされてしまい、二人の主役感が薄れてしまいます。
3/この日はアシスタントがいたので、二人の歩く速度に合わせて動いてもらいました。失敗例も載せていますが、グリッドはスポット光のためすこしでもずれると真っ暗になってしまいます。この微妙なコントロールは現場で使ってみて覚えるしかありません。この画は二人を歩かせていますが、まずは止まった画からスタートするのが良いと思います。また、どの程度の範囲を照らしたいかによって、重ねたハニカム(ブログ第三回:ハニカムグリッド参照)を間引いて使ってもよいでしょう。
程よいアクセントを作れると、データも華やかに。
曇りの日は影がキツくならないので、撮影は晴れの日よりもある意味で楽なのはみなさんご存知の通り。そのかわり全カットデータを見た時に抑揚がなく、「ずっと同じ光じゃん…」みたいな日もあると思います。また、サンセットなど空に表情がある時や夜なども、シルエットにするしかないorオンカメ直当てして背景も明るくなってしまう、というようなカットはよく見かけます。
そういう時に、今日ご紹介したライティングを知っておくと程よいアクセントになるはず。じゃあ気合入れて全カットライティングしたれ!と思うかもしれませんが、それをやろうとすると、ライティングにも時間がかかる、連写できないから撮影時間も伸びる、というダブルパンチを食らうことになります。もちろんライティングをよく理解したアシスタントがいて、連写してもチャージが鈍くならないストロボがあれば別ですが。
僕自身も、日中のロケ1本のなかでライティングするカットは0~1割程度。撮影会社に所属していて、ロケへ常にアシスタントが同行できる環境の方は、ライティングに特化したアシスタントを育ててみるのも面白いと思います。今回ご紹介した、逆光、サイドライト、直当ての3パターンを覚えておくだけでかなりバリエーションが増やせるはずです。
ちなみに、僕がロケ現場で使うのは「3:サンセットや夜景など、背景の露出に合わせたスポット光」が圧倒的に多いです。なぜならグリッドはボックスほどかさばらず、レンズポーチの中に入れておけるので着脱も簡単ですし、3で紹介したライティングはロケだけでなく暗めの教会や披露宴会場でも使えるので。
機動性と表現力を備え、応用も効くので非常に重宝しています。アシスタントがいたほうがいいのはもちろんですが、きちんとセッティングしておけば一人でも撮影可能です。ぜひチャレンジしてみてください。
次回からは物撮りの撮影に使えるスキルの紹介です。物撮りの基礎知識、流れを紹介し、そこから指輪撮影について書きます。題して「リングピローからの卒業。二人の大切な指輪をきちんと撮る!」です。ある意味ではこのブログの本命になる記事のスタートです。お楽しみに!